混迷の社会 [社会]
見えない脅威への恐れは、バブル崩壊、冷戦の終結のダブルパンチによってピークに達した。不安が覆い尽くす世の中を見渡せば、メディアの言う“混迷の社会”という表現もしっくりくるような気もする。
資本主義化する世界で着々と育まれてきた社会的欲望(他者に優越したいという願望)が鬱屈した個人的妄想を再生産するプロセスは、現代社会に生きる成員に通底すると信じられてきたグランドセオリーの倒壊、或いはグランドセオリーそのものが幻想に過ぎなかったことを決定付けるものと云える。
社会的欲望が個人的妄想を産出する過程で放出されるエネルギーを糧に肥え太ったメディアは、次代を担う産業として開発の進められてきた情報技術を駆使して“不安”に火をつけた。
蒸発し霧散する“不安”は人々の意識の奥底に刷り込まれ妄想と化し、それらの妄想が隙間なく張り巡らされた電線を伝って不特定多数の大脳にリンクする『混迷の社会』、それが情報化社会だ。高度情報化社会の到来によって急速に収縮するグローバルな世界は、重力崩壊によってブラックホールと化す巨大な星を思わせるが、ここ日本においては重力と呼ぶには心もとない不安が、ただ霧のように漂っているだけのような気もする。
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